●五番目のコード

五番目のコード
The Fifth Code
D・M・ディヴァイン
D.M.Devine
野中千恵子 訳
創元推理文庫
八人がわたしの手にかかって死ぬだろうーーースコットランドの地方都市ケンバラで、女性教師が何者かに襲われた。この件を皮切りに連続殺人の恐怖が町を覆う。現場に残された、八つの取っ手(コード)がついた棺の絵のカードは何を意味するのか?
弱者ばかりを標的にしたこの一連の事件を取材する新聞記者ビールドは、複数の犠牲者と関わりを持っていたため警察に疑われながらも、自身の人生とキャリアを立て直すために事件を追う。謎の絞殺魔の恐るべき真意とは。読者を驚きの真相へと導く巧者ディヴァインによる傑作。
巧いです。このディヴァインという作家はイギリスの方なのですが、非常に限られた人間関係の中での事件を描かせると抜群に巧さを発揮する人ですね。
特にこの作品はすでに一度現代教養文庫で出版され、絶版になったものを再版したのですが、現代教養文庫の当時の担当者がこれを選んだのもなんとなくわかります。
文体、構成、事件関係者、主人公と関わりのある人々とどの部分をとっても何かがある、ちょっとした何かがあってそれが事件とどんなふうに関わり合うのか、ナゼなのかの散りばめ方などがバランスもいいです。
主人公も過去にあったある出来事から立ち直りきれず、いじけていてヤケを起こさずにいられないいらだちを抱え込んだ、ビールド。彼の再生の物語的な側面もあり、その部分が事件とうまく絡んであります。35才の男の再生物語ですから、爽やかさ瑞々しさには若干欠けるかもしれませんが。
この事件、ある事柄に気がつくと犯人の目星が付きます。動機もわかります。でも、この事柄は最初から提示されてはいますが、気がつくのはもっと事件を重ねてからになります。
犠牲者たちの共通点、という言葉が大きなヒントになりました。
ラスト、ビールドは犯人を捕まえられるのか。そして、人生を再度立て直せるのか。
それにしてもいい男なんでしょうね、このビールドは。35才ごときで中年だ、中年になってしまったと嘆くんですから。
ははん、その先にはもっとビックリするようなことがいっぱいあるんだぞ、見た目には。